SamSara

森川悠太の

《ミンドロレポートその43》



柔らかい鎖国

森川悠太とマンガハン村の長老
Yutaとマンガハン村の長老



windmill格差社会か?

 一時帰国する際首都マニラに二日ほど滞在したが、そこで直面した経済格差、教育格差が同じように日本で騒がれていることに驚いた。数年前まで一億中流と言われ、資本主義ではあるが、一種社会主義のような国を形成していた日本。近年、ヒルズ族に代表されるよう年収何億という一部のお金持ちと三畳一間で生活している貧乏人とその開きが実に大きくなっているそうだ。全国の大学の中で、東大生の両親の収入が全国一という数字はありながらも、これまでは経済格差が教育格差、ひいては機会の不平等につながることへの懸念は大きくなかった。しかし、2006年現在、努力と根性だけではどうにもならない状況が産まれつつあるそうだ。

一日1ドルの生活を送る自分
 フィリピンで世界銀行が定める貧困ライン(一日一ドル)以下の生活を送り、非識字者に囲まれ、常に死と隣り合わせの生活を送っている人達と共に飯を食っている私から見れば、日本の懸念など取るに足らない。むしろやはり人間、自分の身に現実的に危機が迫らないと興味、関心が向かないものなのかと改めて考えさせられる。

マニラの格差は半端じゃない
 額面の開きだけでみれば日本の足元にも及ばないが、機会の不平等という意味においてはマニラに二日居ただけでもうんざりするほど見せ付けられる。突然の大雨に対し、ここぞとばかりに自分の傘を貸し出し、建物間をびしょ濡れになりながら同行する少年少女。一方、銀座顔負けの超高級ブランドショップ、およそフィリピン人にはにつかわしくない癒しグッズが売られるなど、どこの途上国においても課題となっている都市部の格差社会がマニラにおいても存在する。

 先進国日本、途上国フィリピンという二つの国だけでなく、世界中どの国においても貧困が生まれるのは市場経済に依拠する生活を送るからである。有史以降、微増であった人口が産業革命以後、たったの200年間で6倍、国民一人あたりの収入は9倍に膨れ上がり、その結果貧困がうまれた。過去、経済発展を遂げた国の歴史を見る限り、貿易の自由化が国の発展につながり、ひいては社会的厚生を高めたのは事実である。しかし、21世紀の今、環境への配慮が声高に騒がれ、後発国にとって上はどん詰まり状態にあり、同じような経済発展を遂げることが困難な状況下にある。そこで、私は柔らかい鎖国を提案したい。

「柔らかい鎖国」とは
 提案の背景には以下のようなことがある。近年、欧米や日本において失われたコミュニティのつながりを再生し、地球にも人・動物、全ての生き物に負荷の少ない町づくりとしてエコビレッジという概念が浸透し始めている。このような取り組みに対し、異論はないが違和感はある。作られたコミュニティ。歴史の流れで見れば数十年先には不自然性は消滅するであろうが、何かしら無理をしている感は否めない。そもそもの出発点コミュニティを一から作ろうという点に強く不自然性を感じる。もちろん失われているが前提になっているわけでそこからが始まりというのはごく当たり前であるが、この取り組みをコミュニティがむしろ強すぎるフィリピンにおいて導入してみたらというシミュレーションが柔らかい鎖国のきっかけである。

 地産池消、自給自足、自己完結、持続可能な開発を町、市、州政府の政策として取り組んでみてはどうだろう。わかりやすい例でいえばコーラ輸入禁止、マクドナルド進出禁止、味の素輸入禁止である。協会が取り組んでいるパーマカルチャーもこれに貢献できる。恐らく住民からは大きな反発が予想される。しかし、出ていきたい人は出て行けばいい。そういう意味での「柔らかい」である。入ってくること、貿易を行うことに関しては厳しく規制するが、出て行きたい人は一時的であれ、永久的であれ出て行けばいい。

 恐らくこの提案をサンタクルス市の市長にしてみたら恐らく返答はこうであろう。君たち先進国の人間は先進国の生活を享受しているからそのような提案ができる。むしろ私たち途上国の人間が発展する機会を奪うのかと。私も少なくとも一年以上ここミンドロで生活しているわけで、彼らが何を望んでいるかはわかる。しかし、その望みを手に入れるために失われるもの、または厳しい生活まで含めて望んでいるわけではないことも知っている。体面だけを取り繕った国際化に踊らされるよりも、彼ららしい生活をつらぬけばいいのだ。

グッドガバナンス
 しかし仮にこの提案が採用されたとしても最低限求められる条件としてグッドガバナンスがある。冒頭日本とフィリピンにおける機会の平等を比較したが、一個人の可能性に大きくかかわってくるグッドガバナンスが日本とフィリピンでは経済格差以上に開きがある。具体的にいえば自己完結型のコミュニティを築くには病院、年金等の安定した福利厚生が必要不可欠である。現実サンタクルスにおける福利厚生は最低レベルである。輸入に対する強い規制をする一方、政策にたいする介入は寛容でなければならない。


windmill2006年5月



21世紀協会ボランティアスタッフ
森川 悠太
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