SamSara

森川悠太の

《ミンドロレポートその41》



コミュニティフォレスト

はげ山とマンニャンコミュニティー
はげ山とマンニャンコミュニティー



windmill
入会地(いりあいち)
きっかけは理事池田が現地視察の際に話された入会林(いりあいりん)・入会地(いりあいち)であった。入会地とは、ある範囲の森林、原野、あるいは漁場を公のものとし、ある決まった範囲の住民が共同で利権を持つ慣習的な地域で、薪、肥料のための落ち葉、その他の採取に利用され、地域住民は入会地の手入れをするというもの。戦後、農地改革により村々は共有の林を失ったため、山林の手入れは土地所有者の責任となり、木材価格の下落に伴い、所有者も手入れすることがなくなり山林が荒廃する原因となったと言われている。

 開発において、受益者の文化や生活習慣を考慮せず、先進国の成功事例をそのまま適用することは、期待通りの成果が得られないだけでなく、コミュニティ(地域社会)にもともと備わっている生活様式、潜在能力を崩壊する事態をまねくことが考えられる。そこで、マンニャン族を対象に植林事業を行なうと仮定し、入会林という制度を軸に現地化はどのようにして行なわれるべきかを考えていきたい。

少数民族の土地利用と森林の管理
 まず始めに、現在に至るまでのマンニャン集落周辺の土地利用をみていく。半遊牧生活を営んできたマンニャン族にとって、もともと森林は誰の土地でもなかった。無限に広がる森林の中で、自然とバランスをとりながら自由に生活してきた。しかし、入植したタガログ人の乱伐により、森林という生活の糧は急激に減少している。これまで環境に負荷をかけることのなかった焼畑農業も、休閑期間の減少から森林減少(環境破壊)を招くようになった。タガログ人が少数民族マンニャンの土地に侵食してきてはじめて、マンニャンに間でコミュニティが自覚され、土地の所有、境界の意識が生まれ始めた。今後は限られた土地の中で有効かつ効率的に生活していくことが求められている。また環境面において、フィリピン全体でみても戦後でも55%はあった森林率は90年代後半には7%にまで落ちている。国・地方政府はこれまでも植林活動を様々な形で試みているが、ことごとく失敗しており、現在はCBFM(Community-Based Forest Management=コミュニティを基盤とする森林管理)という住民主体の植林活動を進めている。

 偶然にもフィリピンにおいて入会林と同様にコミュニティをベースとした森林管理(CBFM)が既に制度として確立している。これまでの植林活動は政府主体で行ない、住民の視点が欠落していたことから、深刻な土地紛争、巨額のプロジェクト資金運用における汚職行為の蔓延、造林労働者との契約トラブルとことごとく失敗に終わってきた。一方、CBFMは従来の社会林業政策と比べてはるかに包括的な住民参加型の森林政策である。しかし、管理計画は基本的に政府が作成するので、政府と住民の間で利害関係が錯綜し、今後も資源をめぐる紛争は続くものと考えられる。

 次に、マンニャン族にとって、入会林、CBFMを導入する意義、必要性、可能性、抵抗をみていく。上述したように現在マンニャン族は緊急に生活スタイルの変更を求められている。慢性的な食料不足もさることながら、限られた土地の中で生きていく為には効率的な土地利用(例:アグロフォレストリー)を行なわなければならないが、農業の歴史は浅く、植林、人為的な森林再生に対する知識、経験は無に等しい。一般に住民参加型植林計画は、短期間の耕作権と引換えに、植林に必要な労働力利用という批判がある。始めの数年のみ植林活動と並行し、樹間を耕作地として利用する権利を得るが、数年後には耕作権のみならず、入植権を失うというものである。また、新たな土地を供給され取り組む住民にとっては、永続的な土地利用が保証されていない限り愛情をもった森林管理は期待できない。住民参加型と声高にうたっただけで、実際はただの労働の搾取となってしまう。これが植林事業において、当事者(耕作者)の長期的なインセンティブ(誘因、動機)にかける要因である。マンニャン族においては全地域ではないがAncestral Domain(少数民族慣習的領土) に指定されていることで、土地の永続的利用が確約され、将来的な恩恵も自分たちで受けることが出来る。その為、従来のような抵抗もなく労働力の搾取という懸念もない。

 一方、国・地方政府に視点をうつしてみる。国、地方政府にとって、森林面積増加は緊急の課題であり、数値を伴う具体的な政策目標も掲げられている。しかし、CBFMはあくまで政府主体で計画をすすめていくが、実質的に政府が主体となってマンニャンの土地に植林計画を行なうことは地理的にも、人材的にもキャパシティーを超えている。

森林管理プログラムを協会が実施すれば
 そこでCBFMを軸とする、政府主体ではなく当協会主体の植林活動は双方にとって都合がいいと考えられる。本来政府主体ですすめていく政策を21世紀協会が請け負うわけでいくらかの補助金(本来使用されるお金)が出る可能性はある。また、当協会は長年の活動で培った信用が政府、マンニャン双方にある。信用と文字にすればたった二文字だが、ゼロから植林事業を始めることと比べれば大きな違いがある。対象コミュニィティをさがすところから始めるとすれば、冒頭に述べた危険を回避するためにはコミュニティの実態調査(住民組織、教育レベル、生活様式、意識等)、森林消失の原因、残存森林調査、実施地における地方政府の取り組み等、信頼関係を築き、真の意味での実態調査を行なうには膨大な時間を要する。15年の歴史を持つ当協会とてその危険性を持ち合わせていることは常に意識しておかなければならない。

 では具体的にどのようにコミュニティを基盤とした植林活動を行なうかということである。CBFMという制度に対する認知不足から断定的なことがいえないのが残念だが、制度次第では当協会単独ということも考えられる。フィリピンでは制度こそすばらしいが、実施を伴わないということは往々にしてあり、中央政府と地方政府との温度差が激しいということも容易に想像がつく。アドボカシーという意味においてもぜひ政府を巻き込んで実施していきたいが、現段階では柔軟な対応が求められている。政府の参加の有無は別として、当協会が中心になって行なっていくには、基本的に現事業(農村開発,村落形成)の延長線上で実施していくであろう。これまでの有機農業・パーマカルチャーの概念を軸にすすめてきた農業指導をもとに、アグロフォレストリーという新たな土地利用、森林作りに挑戦する形となる。また、一般的に植林活動・アグロフォレストリーといった事業は樹木を収穫物と見る視点がかけているのではなかろうか。冒頭に述べた入会林においては木材を販売していたことが伺える。5年生、10年生、15年生の樹木をバランスを考えながら植えることで、木材として販売しても森林づくりに対する影響は低いと考えられる。伐採時に伐採地を農地として有効利用することもできる。幸いにしてマンニャンは現在まで炭を作り販売している。長期的なインセンティブを既に持ち合わせていることがわかる。

 結びとして、コミュニティを主体とした森林作りに取り組む時期は絶好であると考えられるが、住民主体で事業に取り組むのは時期尚早である。政府主体でも住民主体でもなく、当協会主体となることはやむをえない。しかし、これまでの活動もそうであったように、マンニャンと泥だらけになりながらゆっくりと確実に歩をすすめていきたい。これも常であるが、いくらわたしたち外部の人間が事業、制度、法律と声高に叫んだところで、彼らマンニャンにとっては大きな変化はなく、単に紙切れが一枚増えたに過ぎないのかもしれない。

《サンサーラ》巻頭エッセイ「入会林」もごらんください

windmill 2005年10月
21世紀協会ボランティアスタッフ
森川 悠太
[参考]

タウンヤ法
 →樹木の植栽(藩種)と同時に、あるいは、その直後から樹冠が閉鎖し、照度不足で作物の生育減退・収量低下が起るまでの数年間、植栽した樹木の列間あるいは林内で、主としてオカボ・トウモロコシ・まめ類など一年生作物を栽培することをいう。その後は樹木の保育のみを行い、最終的には人工林を造成するものである。林業に大きくウエイトをおいたものである。

問題
・ 国や森林公社など、植林をすすめるものは、樹冠の閉鎖、森林の再生をできるだけ早く達成し、次の荒廃地の造林にとりかかり、森林面積を拡大したい。一方、土地を借りる耕作者は新しく与えられる土地での地拵え・除草がたいへんなので、収量が著しく減少しない限り、同じ土地でできるだけ長期間、それもできるだけ広く耕作したい。ここに、造林者と耕作者の間に大きな葛藤が生じる。
   →例:作物への日照をできるだけ保つため、伸長する樹木への過度の剪定・枝打ち

・ タウンヤ法での造林に参加・依存している貧しい農民の弱みにつけこんで、短期間の耕作権と引換えに、人口造成に必要な労働力をただで提供させようとしているとの批判がある。
インドネシアのツンパサリ
5年間の契約期間中2年間耕作が許され、その後は植林の善し悪しでボーナスが支払われる場合あり。雇用の半額の経費で植林可能

インマス・ツンパサリ
@ 高収量種の導入A深耕B施肥C病害虫防御の為の薬害散布D降雨にあわせての藩種時期の選定など、作物収穫の増収をはかった取り組み
問題
→樹木と作物の共存・生存の均衡がくずれかけてしまう危惧あり

MAMAプロジェクト
造林対象地域を、6つが1単位のブロックに区分し、その1つのブロックで農作物を5年間栽培したあと、樹木を植栽するもので1/6はいつも農地として割り当てられる。農地と林地が明確に区分されるアグロフォレストリーといえる。5年ごとに移動する。林地は5年生、10年生、15年生の樹木を植え、伐採時に伐採地が農地となる。


参考文献:
アグロフォレストリーハンドブック AICAF 1998年 社団法人国際農林業協力協会




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