SamSara ミンドロ体験記 -takayuki-


ミンドロ紀行
〜ミンドロとそこに住む人々〜
(2002.11.18〜11.30)
渡邉隆之

マンニャン式臼と杵で米を搗く渡邉隆之さん

去る11月18日から11月30日までの日程で、私は池田理事長、瀧村さん、佐賀さんと共にフィリピンはサンタクルスの現地事務所を訪問させていただきました。

ハッチェリーおじさん

 サンタクルスにある21世紀協会の現地事務所は、海岸から数十メートルほど入った砂地にあります。緯度の割に海風が涼しく、この時期の夜明け前には肌寒さを感じるほどです。  

 私が現地事務所の隣にある家の高い木を見上げていたところ、そこに住むおじさんが声をかけてきました。昼間から酒を飲んでいるのか、妙に赤い顔をしています。

 おじさんの家には小さい子どももいて、21世紀協会の子どもたちが遊びに行っているようです。おじさんは初めタガログ語で話し掛けていましたが、タガログ語が通じないとわかると、英語で話しだしました。「この木の花を食べるとうまい」や、「花にはビタミンがある」などと教えてくれていましたが、そうしているうちに現地事務所のベンチに座り込みました。なまりの強い英語で、「ハッチェリー」「ハッチェリー」と繰り返しては昔の仕事を熱心に語っていました。話を聞いていると、サンタクルスに越す前は、鶏のヒナをかえす仕事に携わっていたらしく、今は魚の干物を売っているようです。西ミンドロ州には、ルソン島のピナツボ火山噴火で避難してきた人が多数住んでいるので、このハッチェリーおじさんもその一人なのでしょう。

 ミンドロ島では現在、外部からの移住で人口が増加しているそうです。様々な事情で様々な人が移り住む過程で、マンニャンとの接触も増えていきます。かつて海岸にまで住んでいたマンニャンが、土地を追われて山間部へ移った過去のできごとが、現在も進行しつつあります。一見気さくなハッチェリーおじさんでも、生活がかかっているのだからなりふり構っていられないときが来ます。ひとりひとりはいい人かもしれなくても、「流れ」のような勢いが生じたとき、きれい事はどこかへ吹き飛んでしまうものです。

続いていること

 私たちが泊めてもらった男子寮の入口で、夜になると奨学生同士が何かを熱心に話し込んでいました。毎晩三時間は続いています。紫垣さんに聞いてみたところ、マンニャン語で会話をしているようでした。私には言葉がわかりませんでしたが、十代前半の男子が会話することだとしたら、自分の経験上内容の見当がつきます。小・中学生で親元を離れ、長い年月を生活するのは相当の苦労がついてきます。サンタクルスは地方都市とはいえ、夜の雰囲気には独特のものがあります。小学生くらいの男の子が道端でタバコを吹かし、家の前に椅子を出して酒を飲みながら大声で騒ぐ人がいます。昼間でも剣呑な視線で私たち海外からの訪問者のあとをつける人がいます。21世紀協会の子どもたちも、大人と一緒でなければ怖くて夜道を歩きたがりません。つらさに耐えかねて親元へ戻る子どもがいるとも聞きました。それでもみな熱心に勉強し、英文どころかローマ字で日本語が書ける子もいるほどでした。

 現在サンタクルスにいる最年少の奨学生は、ミヒルダという六歳の女の子でした。彼女がハイスクールをストレートに卒業したとして、およそ十年の歳月が待っています。この多感な時期をサンタクルスの21世紀教会で過ごせたら、マンニャンやミンドロ島にとって将来大きな力が育つことになると思います。マンニャンの子どもたちは、毎日の生活に真正面から取り組んでいました。そして川嶌さんたちスタッフの皆さんは、彼らの思いに対し正面から受け止めようとしています。真剣勝負の教育がそこにはあります。教育は評価が非常に難しいものです。それでもこの苦労と努力はぜひとも続けていかなければならないものと、ホームページの写真より思った以上に成長していた奨学生たちを見て感じました。

 現地訪問にご一緒させていただきました池田理事長をはじめ、川嶌理事、紫垣さん、国金さん、スタッフの皆様に心より御礼申し上げます。

余禄

 帰国直後、私は現地で作ってしまった傷が悪化し、「右下肢縫窩織炎」のために十日間入院しました。右足がひざ下まで全体的に一センチほど腫れ上がり、くるぶしにできた傷口が赤黒く変色し、ベッドから動くことすら面倒に感じるほど足が痛み、三九度の熱が出ました。原因は結局のところよくわからず、破傷風やフィラリアの症状も、熱帯病の症状もありませんでした。現在はすっかり回復しております。日本でも起こりうるけがらしいので、今後気をつけたいです。

2002.12


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