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多元的価値観の共生



                            ミンドロの夕日
                  
ミンドロとマンニャン
 フィリピンの片隅、ミンドロ島に居住する忘れられた少数民族マンニャン。文字を知らず、簡単な焼き畑農業のほかは作物の栽培技術を持たず、常に食物を探して移動する半遊牧の民は外部と交わることなく1000年以上その生活形態を守り続けてきました。が、近年、低地人が生活圏に入ってくるようになり、外部との交流が始まりました。交流といえば聞こえはいいのですが、実際は圧倒的優位に立つ外部者による搾取と収奪でした。森林は破壊され、生活圏が狭められ、食べるものもなくなってきました。民族が生き残るには、低地人のように定住して農業を営み、教育を受けて外部に蹂躙されない力をつけるしかありませんでした。

 われわれ21世紀協会はこの少数民族、マンニャンが独自の文化と言語を保ちつつ、外界と交流し、生活をして行くことができないものかと、社会開発を手がけたのが1990年です。爾来、最低の教育も受けていない人々の人間開発の難しさをかみしめながら、教育と農業を中心とした社会開発をめざしてきました。この小さな世界の開発経験は、現代世界のあらゆる問題を内包しており、失われようとする文化が何を意味するか、違った価値観は共存することができるのか、といった疑問がいつも見え隠れしていました。

失われ行く文化と言語
 今日、世界がグローバル化する中、マンニャンの言語を含め、多くの言語や文化が失われようとしています。一つの文化、一つの言語、一つの価値体系、一つの宗教はどんなに些細なものであっても、それぞれにユニークな世界の解釈なのです。文化とは、それぞれの地域に住む人々がその地域や環境にもっとも適した生活様式として生み出したもので、環境の変化に応じて独自の変化を遂げてきたものです。たとえ取るに足らないと思われる文化も、その文化が失われることでそこに様々な形で関わってきた人々や自然環境が影響を受け、場合によっては、危機的状況に追い込まれることもあります。

多様な文化の同居する世界
 多元的価値観、文化が同居できる世界の構築をめざすのは、単に人類みな兄弟だから仲良くというヒューマニズム的な発想からだけではありません。失われようとしている文化を惜しむアナクロニズムでもありません。多様な文化がともに栄え、人々がそれぞれ対等に交流し、エネルギーを交換することにおいて、世界は豊かになっていくのです。多彩な人々、様々な社会、多種の文化が引っ張り合い、押し合ってバランスを取ることにこそ豊かな地球人類の未来があることをわれわれは認識しなければなりません。

                                   (池田晶子)

《サンサーラ》37号 2006.7.5初掲

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