インターネット版 《サンサーラ》

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マンニャン奨学生、クリーン選挙に一役


1995年地方選挙

 去る5月8日、ちょうどわたしがフィリピンに到着した日、当地フィリピンでは、上院議員の半数(16名中8名)改選、および、地方市長選が行われました。出発前からこの日は相当の混乱が見込まれていましたので、出発日をずらそうかと思案したほどでしたが、マニラ市内は予想外に静かだったのを覚えています。マニラに到着早々、近くの選挙会場をのぞいてみましたが、意外に秩序が保たれているのに驚いたほどです。

 '86年の革命以降幾度かのクーデターを経て、治安はだいぶん改善されたのではないでしょうか。もちろん、日本でもしばしば報道されているとおり、ミンダナオ島での民族紛争はいまだに解決の見込みがありませんし、今回の選挙でも殺人を含めた相当数の不正行為が連日報じられ、ミンドロ島のわれわれのプロジェクト施行地域サンタクルスもその例に漏れません。そんな中、わたしたちのマンニャン奨学生の中からかなりのハイスクール生がクリーンな選挙を遂行するために大活躍しました。

マンニャンPPCRVの設立

 マンニャン奨学生の活躍の母体となった組織はPPCRV(Parish Pastoral Council for Responsible Voting)と呼ばれ、選挙時には大きな力を発揮します。PPCRVは設立当初より、カソリック教会が関与しており、教会の選挙での役割は大きいといえます。そんな中、今回はじめてPPCRVはマンニャン族内にメンバーを組織することを決定、21世紀協会奨学生をメンバーとしてサンタクルス地区にマンニャンPPCRVを創設されました。

 現在でも多くのマンニャンは読み書きを学ぶ機会に恵まれず、このことが原因で、選挙のたびに政治家の餌食になっているのが現実です。サンタクルス地区内だけでも数万人のマンニャンは文字が読めません。彼らの無教育と貧困は、票の売買を誘い、マンニャンはこれまでいつも有力政治家の票田となっていました。今回初めて、この不正を是正すべく、PPCRVの指導のもと、マンニャン族の間でPPCRVのメンバーが組織され、読み書きのできるマンニャンが読み書きのできないマンニャンの投票をサポートするというシステムができたわけです。具体的には、18歳以上(有権者)の中から、読み書きのできるマンニャンがメンバーを構成、各メンバーは、3人の読み書きのできないマンニャンの代表として、彼らを投票場に誘導、有権者リストの中から彼らの名前を探し出し、チェック、投票記入のアシスト、不正行為を目撃した場合、速やかにCOMELECに報告する、という任務を持っています。メンバーの大勢を21世紀協会の奨学生が占めました。以下は選ばれた奨学生の名前です。Hermie, Lenie, Luisa(3人は現在バタンガスの大学に通学)Randy, Marcial, Paulo, Lorna, MarieJane, Evelyn

教育の大切さを痛感

 マンニャンがタガログ人の助けを借りずに、みずからの仲間内で、正しい選挙を行うことができたことは、かれらに大きな希望と勇気を与えました。とくに、PPCRVのメンバーに選ばれた者は、読み書きのできることを、どれほど誇りに思うことができたことでしょう。また、選ばれた奨学生は、日々学校で学ぶことの意義を再認識できたはずです。

 教育の成果を目の当たりにする機会はそうありません。今回は、その意味で、マンニャンのみならず、選挙にかかわった多くの者が、成果を体験することができ、教育の大切さを痛感しました。わたしたちにとっても、活動の評価を得ることができたわけです。これほどうれしいことはありません。里親の方々をはじめ、会員のみなさまには、現地より、心からの感謝の送ります。




奨学生メンバーとのインタビュー

<出席者>パウロ、ランディー、ローナ、マリージェーン

−PPCRVのメンバーに選ばれたことをどう思うか。

パウロ  同じマンニャンの仲間を助けることができて、とてもうれしかった。それに、マンニャンがどんな風に投票するかを見ることができて、とても勉強になった。

ランディー  僕も、読み書きのできないマンニャンを手伝うことができて、とてもうれしい。

ローナ  わたしもとてもうれしかった。他のマンニャンを手伝うことができたし、両親に代わって、記票できた。両親とも、自分のことをとても誇りに思ってくれた。

マリージェーン  わたしも同じ気持ち。自分が読み書きできることをとても誇りに思うことができたし、そのことで、他のマンニャンを手伝うことができて、とてもうれしかった。両親も喜んでくれた。

−活動中に何か問題はなかったか。不正は目撃しなかった?

パウロ  何も問題はなかったと思う。仕事に夢中でまわりのことは気にならなかった。

ランディー  多くのマンニャンが有権者リストの中から自分の名前を見つけるのに苦労して、とても時間がかかっていたのを覚えている。

ローナ  そう、名前を探すのにとても苦労した。

マリージェーン  本当。PPCRVのメンバーがいなかったら、マンニャンの人たちは、自分の名前すら見つけることができなかったと思う。

−何かほかに言いたいことは?

パウロ  マンニャンの人権を守ることができて、とても誇りに感じている。

ランディー  教育の大切さを感じた。また、チャンスがあれば、手伝いたい。

ローナ  わたしもこの仕事をまたやりたい。

マリージェーン  わたしも同じ。

 子供たちは本当によくやってくれました。とても誇りに感じます。学校の先生たちも、彼らの仕事ぶりを見て驚いていました。本当に感動的な一日でした。彼らをサポートしてくださっている日本のみなさまに本当に感謝しています。

(川嶌寛之)

《サンサーラ》 13号 1995.12.25掲載


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