奨学金事業


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| 概要 | 受益者 | 予算 | 事業責任者 | スケジュール | 効果 |


概要 識字教育

 21世紀協会では、里親制度によってマンニャンの子供達の公立学校への就学を普及させているが、識字教育事業(学校給食プロジェクト)はこれに準ずる補助プログラムである。

マンニャンの子供達を公立学校に就学させることが奨学金事業の大きな目的であるが、実際にはさまざまな問題がある。マンニャン族の生活する集落のほとんどには学校がなく、従って子供達は学校に通うために親元から離れて生活しなければならない。子供達、特に小学生レベルの子供達にとってこれは大変精神的に辛いことである。また、一般フィリピン人と同じ学校に子供を通わせることを両親は極度に嫌がる。里のフィリピン人に虐げられ、差別されてきた経験によるものである。そこで、特に人里離れた学校のないシプヨ村では定期的に子供達を集め、「読み書き」を中心にした基礎教育、識字教育事業を始めた。

識字教育風景

 こうした事業には給食を支給することが大きなインセンティブとなる。マンニャン族は飢えに瀕しているため日々の糧を得ることに忙しく、子供達とてその例にもれない。しかも子供達はほぼ全員栄養失調であり、食べ物なしでは学ぶ元気もないからである。現在サンタクルス郡にはたくさんのマンニャン村小学校があるが、そのほとんどが廃校の危機にある。そのなかで郵政省ボ配分金事業による学校給食事業を行ったカラミンタオ村、シアポ村小学校のみが安定運営を行っており、かって閑古鳥が鳴いていた教室もそれぞれ二つに増えた(96年度完了)。こうした例も示すように、給食の支給は最貧困層に属する少数民族の教育普及に大変有効かつ必要なことである。日本の学校給食も戦後同じような理由で始まったことを考えれば、その意義を十分理解できるだろう。

 さらに、こうした非公式識字教育事業は将来公立学校誘致のための下地作りとなる。マンニャン集落には学校がほとんどないが、人里離れた山岳地帯に位置するという事情のほか、彼らの生活スタイルにも問題がある。そもそもマンニャン族は焼き畑、狩猟採取を生業としており、従って定期的に集落が移動する。学校の誘致にはそこに住む人々の教育への熱意、そして定住化が絶対条件である。

 また、山里に位置するこうしたマンニャン村小学校には教師が赴任したがらず、教師不足も大きな問題となっている。21世紀協会では、優秀な奨学生を大学に送っており、将来教師としてこうした僻地に赴任し、教育の普及に貢献することを奨励している。

 事業地シプヨ村では過去4年間さまざまな困難に直面しながらも(遠隔地、マラリアをはじめとする病気等)継続、その結果村人の教育への関心は大変高まった。毎月行う定例集会で村人に将来の夢を尋ねるとそのほとんどが教育に関することである。特に、識字教育の充実と将来の学校誘致への期待は大きい。背景に、この村で別途進めている総合農業構想の影響も見逃せない。農業を学ぶことで生活が向上し、その喜びが「学ぶことの大切さ」を教えたのである。また、農業の普及は村人の定住化にも貢献している。

 「公立学校の誘致」は最終的なゴールであり、98年度より文部省と定期的に話し合い、その可能性を探っている。99年度は、ある程度文部省のガイドラインを導入することにより、より効果的な授業の実現を目指す。また、今期の事業はこれまで3年間町で奨学生の指導及び協会の事務員として貢献してきたBernardo Monteclaroが担当する。担当者は農業が専門であるとともに、最近教育コースを修了しており、事業の運営には最適任と言える。将来的には現在大学で教師をめざして学んでいるマンニャン奨学生を後継者とする予定である。

 また、野菜作りや植林は経験的に子供や女性のほうが熱心であることを踏まえ、子供と女性を中心に園芸実習や植林を行う。これは理科や科学の実習であると同時に、学校給食の材料を自分達で生産するという大きな意味があり、自立意識を育てるはずである。シプヨ村のこの小さな事業が大きく実るにつれ、地域社会に影響を与え、「先住民族のすべてに学校を」といった社会運動に発展することを期待する。



識字教育受益者 識字教育
シプヨ村住民35名(大人15名、子供20名



識字教育事予算 奨学生個別給食費
識字教育指導員給与P6,000×12 =P72,000\288,000
給食Joeffrey Saet\ 86,400
種子及び果樹苗木代
(給食及び園芸指導用)
一式  P3,000 \12,000

出席者は子供20名大人5名。大人の出席者は流動的だが一回平均の参加者5名で計算。授業は週3回を予定している。 また、園芸指導の受益者は上記の子供達の他に、一般女性約15名が対象に加わる。




識字教育事業責任者 識字教育
指導員Bernardo Monteclaro
農業指導監督Joeffrey Saet
給食供給管理者Bernardo Monteclaro



スケジュール 識字教育
 通常の授業は週三回行なわれ、給食支給もこれに合わせる。しかし、農繁期(7月〜8月及び11月)は子供達もほとんど農作業に従事するため授業の実施が困難なこともあり、この期間のブランクは乾期(2月〜5月)に集中講義を通して埋め合わせる。この他に、課外学習として、植林の苗木のケアや野菜づくりを教えるとともに(講師のMonteclaro氏は農業専門家でもある)、給食の材料とする。
 また、栽培する野菜は、米作りのできない乾期(11月から5月)では、オクラ、カボチャ、トマト、豆類、ニガウリ等を考えている。雨期(6月から9月)には、米作のほか、バナナ、椰子などの植林作業の実習も行う。



期待される効果及び住民の自立の促進についての効果 識字教育

  1. アイデンティーティの確立
     ほとんどのマンニャン族はそもそもフィリピン人としての自覚を持っていない。村人に対して「あなたはフィリピン人ですか?」という質問をしたところ学校教育を少しでも受けた一部(21世紀協会の元奨学生)を除き、「わからない。私はマンニャンです」、という回答が返ってきた。国語教育がいかに国民意識を育てるかという好例である。識字教育は、まず自立以前に社会の一員であることの自覚を促すものである。識字率の高いカラミンタオ村(マンニャン村)では村人全員がフィリピン人である自覚をもっていることがそれを裏付ける。

  2. 社会正義を実現する
     選挙時を例に挙げよう。戸籍制度のないフィリピンでは、選挙前に投票のための登録手続きが行われる。出生届すらないマンニャン族の多くはこのときだけ政治家の得票稼ぎのためにかり出される。「現金」や「食料」を代価にトラックで町に運ばれた彼らは、字が書けず、彼らの言いなりに特定の候補者の欄に「しるし」をつける。買収が「不法」であることすら認識していない。これらは大きな社会問題になっているが、少数民族の間で識字教育あるいは教育が普及しない限り解決しない問題である。選挙制度に対する最低の知識を持つこと、あるいは自分の名前が書ける、というだけで相当クリーンな選挙に貢献できるのである。教育を受ける機会に恵まれた21世紀協会の奨学生の多くが、選挙の度に選挙管理委員会の依頼と指導のもと、字の書けないマンニャン族の代筆要員として、また不正監視要員として活躍している。

  3. 経済生活の改善
     マンニャン族の多くは、定期的に一般フィリピン人と交易活動を行っている。また、タガログ人のもとで畑仕事をすることも多い。しかし、彼らのほとんどは数を数えることができず、日当の支払いを含め不正が横行している。算数の基礎を習得するだけでも、経済生活は確実に改善する。

  4. 女性の自立の促進
     また、女性にも広く教育の機会を与えることは女性の自立に大きく貢献する。原始民主主義社会ともいえるマンニャン社会でも、実際の政治的発言権は男性が握っている。しかし、比較的教育を受ける機会に恵まれたマンニャン村とそうでない村では、明らかに女性の発言権に違いがある。例えば、学校のあるカラミンタオ村では村の集会にかなりの女性が参加し、発言も活発である。さらに、教育を受けた母親は子供を学校に送ることに非常に積極的であり、シプヨ村のように頑固に子供を親元から離したがらないということもない。女性の教育は女性の自立を促すばかりでなく、教育推進のエンジンでもある。


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