SamSara



国金さつきの
《ミンドロレポートその13》



メンタルプロブレム2−私にできること−



村の子どもたちと

新学期

 新年度が始まり、子どもたちがそれぞれの村から帰ってきて一ヶ月が過ぎました。前年度の面々に新たに9名の新奨学生を迎え、それぞれ和気あいあいと、それでいて全体として落ち着きも見られるようになりました。この間にも様々な出来事がありました。毎年増える一方の奨学生希望者も「勉強したい」と自ら申し出てやって来ていても、やっぱり家族や村が恋しくて帰ってしまう者、成績も優秀で生活態度にも全く問題がないものの母親の体調が悪く心配だという理由でドロップアウトする者、そして二ヶ月間の村での休暇中に明らかにやせ細って帰ってくる者、子どもたちの中に病人が多いのはこの休み明けの時期です。食べる物が思うようになくても、病気にかかろうとも、帰り着くまでの道が遠くヒルに何度血を吸われようとも、週末になる度家族のいる村へ帰りたいと子どもたちは言います。村に帰っていくときの何にもまして嬉しそうな彼らの表情を見ると複雑な思いがよぎります。フィリピン人一般に関して言える事ですが、個人に占める家族の割合が非常に大きいのです。ましてや家族とその周辺から成る「村」が彼らの生きる世界の全てであるマンニャンの小さな世界観において、たかだか十歳そこそこで親元を離れ山と街で生活スタイルも異なる所で学校に通う決心をし、時に寂しさに耐えつつ勉強を続けていくというのは彼らにとって確実に挑戦です。子どもと言えど自分の人生を左右する大きな決断とその責任を背負っているということです。

決断と挑戦

 背負うものが私たちのそれと明らかに異なる彼らマンニャンの人々が、自分の人生を自分で受け入れて思うように生きるのは難しいかも知れませんが、その難しさにおいて人は全て共通していると言えます。何らかの要因によって制限を受けており、今ある自分の現状を受け入れ難く苦しんでいるという点で、私もまさに同じ状況にある一個人なのです。ここに来てはっきりと気付いたこと、それは日本という社会の中で周囲を意識しすぎて純粋な自分の欲求や思いに蓋をしてきたことが積み重なり自分で自分と呼べるものが分からなくなってしまい、自身を解放できずに苦しむ、紛れもなくメンタルプロブレムを抱えた自分でした。それでも私自身が納得のいくようにありたいと、漠然としながらも本能からくる欲求に突き動かされて、今ここで開発問題を通して自分の心と向き合い格闘している真っ最中です。日々の活動とこのような精神的な問題の解決には大きく重なるところがあります。結局のところ、それが成功するも失敗するも本人(当人)次第なのです。本人が勉強したい、ああなりたい、こう変えたいと本気で熱望しない限り、その本人に何が訪れるでしょうか。その当人が認識し、心底求めてこそ始めて自分にとって望むべき状況が手に入る、他人はその前では本来無力です。幾らでもアドバイスや実際の問題解決方法のお膳立てくらいならできるかもしれません。けれどやはりそのレベルなのです。結局は本人の心、本人の決断と挑戦しかないのだと、自分自身の抱える問題に気付きより強く実感しました。

気づき

 自分自身との格闘の最中でもある他人としての私ができるのは、彼らの「出会い」の手伝いです。彼らが勉強の必要性に気づき、勉強したいと求め、実際に勉強ができるのも、全ては彼らにとって出会いが導き出すものです。ものでも言葉でも映像でも本でも人でも、その事物との出会いを通して自分自身の内面に気付きが生まれれば、その都度本人が選択と挑戦を繰り返していくしかありません。出来る限りその気づきに結びつく出会いの機会を増やしたいと思っています。彼らを引き合わせる計算した「出会い」の一つとして、奨学生に楽器を持ち込みました。日本で使われなくなったピアニカと笛を集めて皆で合奏するのを目標に練習を始めたばかりです。そもそもこちらの学校に楽器などなく、誰一人としてドレミのドの位置も知らないところから、今徐々に音を繋げていく作業です。音との出会いが何との、どれほどの出会いとなるのか正直言って予測はつきませんが、可能性は未知数です。努力とその後の達成感、表現力とハーモニー(共同作業)の素晴らしさ、そして単純に楽しんでくれればしめたものです。まだまだ道のりは長そうですがこれも出会い、隣で音程の外れた悲しげな「ハッピーバースデイ・トウ―ユー」を一生懸命吹き鳴らすのを聞きながら今回のレポートを終わることにします。

(楽器の収集にあたってわたしの実家近くの小学校で教育にあたる友人と私の両親に協力してもらいました。おかげでこの街中捜してもないくらいの楽器が集まり、地元の小学校に幾らか寄付できるくらいです。物資として送って頂いた方、ご協力していただいた方全てに感謝いたします。真にありがとうございました。)


windmill

2001年7月


21世紀協会ボランティアスタッフ
国金さつき
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