SamSara

瀧村沙織の

《ミンドロレポートその37》



一歩、踏み込むこと




windmill

手の届かない援助


 本当に開発援助を必要としている人たちは、その手の届かない所にいる。

 協会のサンタクルス事務所に「マラリアの薬が欲しい」と、訪ねてきた男性のマンニャンがいる。話を聞くと、事務所からバスで1時間、徒歩で8時間も離れた山奥からやってきている。彼の村では、マラリア患者が多発しているが、衰弱していて町の病院にいくことができない。そこで、薬を飲ませたいが、お金がないから、協会から薬をもらえないか、ということであった。21世紀協会というNGOが、マンニャン先住民族を支援をしているということは、人づてに聞いたらしい。しかし、協会には医療の専門家がいるわけではない。たとえ、奨学生に風邪薬を渡す時であっても医者の処方箋がなければ、慎重に判断する。彼の場合は、患者と一度も接してないうえに、マラリアという重病である。しかも、アフターケアをできる範囲にいない。協会としては、彼はなす術がなく頼る人も団体も、協会以外にはなく、藁にもすがる思いで、はるばるやってきたということもあり、慎重に判断したうえで、マラリアの薬を提供した。

アヒルの薫製を捌く


 我々は、薬を提供することしかできなかった。今回のケースは、ただ単に患者が薬を飲めれば良い、ということでは終わらない。今、病気になっている人は、医療の専門家による適切な治療が必要とされる。さらに、根本的な問題として、病気を未然に防ぐということである。彼の村では、その両方が困難な状況にある。それが困難であれば、彼は再び村で患者がでると、薬を求めて探し回らなければならない。

 病院にアクセスすることも、薬を必要に応じて十分に手に入れることもできない人たちがいる。彼らこそ、本当に助けをを必要としている。しかし、その手は、なかなか届かない。立地的に、援助団体が入り込めるところではない。また、例え医者の往診サービスがあったとしても、彼のような村に行くことはできないだろう。体力的にも限界だろうし、山を知らない医者の方が病気になるかもしれない。彼らは、助かりたい。しかし、術がない。我々は、協力したい。しかし、協力や援助にも限界がある。

空回りを防ぐには

 両者は結び合うことができないのだろうか。このままならば、状況はなにも変わらないだろう。では、どうすれば援助を必要とする人が、手を伸ばすことができるのだろうか。それは、我々が一歩、踏み込むことである。彼らに、一歩踏み込んで関わっていくことである。その一歩は、とてつもなく大きな責任や労力が必要となる。彼らに一歩踏み込んで付き合っていくということは、はるか山奥に患者の様子を見に行かなければならなくなるだろう。場合によっては、病院まで運ばなければならないかもしれない。マンニャンの足で徒歩8時間といえば、私では約3日間ほどはかかる。到着までには、山中で2泊することになる。もちろん、私一人では行くことはできないので、ガイドやスタッフと食料やテント、生活用品を運ぶとなると、並大抵の労力ではない。また、山奥ということで、遭難や共産ゲリラに遭遇する可能性もある。リスクもかなり大きい。しかし、こういった労力やリスクを恐れている限り、彼らのほうに踏み込むことはできない。必要としている人に、手を差し伸べることができない。

援助には限界がある。しかし、いつまでも境界線をひいていると、状況の変化はない。少しずつ、慎重な判断をしながら一歩一歩相手に踏み込み、限界を越えようと努力することで、手を伸ばすことができる。我々から見えにくいところに、手の届かないところにいる人たちこそ無視されるべきではなく、関わっていかなければならない。

windmill2004年5月



21世紀協会ボランティアスタッフ
瀧村 沙織
前へ前へ 次へ次へ
21世紀協会ホームへ 《サンサーラ》目次へ contact us
21世紀協会ホームへ 《サンサーラ》目次へ ご意見、ご感想、資料請求



(c) 21st Century Association 2003