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教育こそセイフティーネット


国金さつきとマンニャンの子ども

9.11後の世界

 9.11後、世界は大きく変わりました。アメリカ一極主義のいわゆる「グローバリスト」が力を得、世界を力でねじ伏せることで「正義」を実現しようという人々が国際政治を動かすようになりました。開発の世界においても、アメリカは第三世界の開発援助は自国の安全保障のためだと公言してはばかりません。アメリカ流の民主主義の実現に力を尽くしている国に対して重点的に援助を配分しようというものです。世界はアメリカ色一色に染まろうとしてます。

 果たしてそれでアメリカの安全保障は守られるのでしょうか。一つの国の、一つの価値観が世界を支配することで、世界の平和が実現するのでしょうか。安全保障をどうするか考える前に、なぜ9.11が起きたのかこそを考えるべきではないでしょうか。冷静にことを見れば、押しつけられた価値観に対する反発と、そのために虐げられた人々の反乱が9.11を呼んだということは明らかです。  アメリカ主導のグローバリゼーションが進むと、持てる者、持たざる者の差が開くばかりで、世界でアメリカのめざしているはずの「民主主義」さえ広がるはずもありません。そんな矛盾をものともせず、ひたすら猪突猛進するアメリカとそれに追随する日本という構図の中で、わたしたちは無力でしょうか。

教育への投資

 70年代のはじめ、タイとフィリピンの人口はほぼ4,000万人ずつでしたが、フィリピンは、タイのほぼ倍の規模、アジア第二の経済規模を誇っていました。それが、30年後の今はどうでしょう。今や、タイは途上国のホープとしてフィリピンに倍する経済規模に成長しました。理由はさまざま挙げられますが、その中におもしろい指摘があります。過去10年間、タイはフィリピンの2倍の予算を教育にかけたというものです。教育にかけた投資は見事に実を結び、タイはASEANの雄となりました。

 また、米国際経済研究所のウィリアム・クラインも興味深い研究結果を提示しています。アメリカ国内の不平等を促進した原因について研究した結果、教育は不平等をなくす方向に働くが、技術の進歩革新は不平等を増す方向に働くというのです。

 さらに日本の例です。元禄の頃から江戸の人口は100万人を超え世界一の過密都市になりました。当時の欧州最大の都市ロンドンは85万人の人口を擁し、世界の首都の名をほしいままにしていましたが、18世紀末、庶民の識字率は2割にも達していませんでした。同時期、江戸の識字率は武士階級で100パーセント、江戸庶民でも8割に達していたといわれています。日本が明治維新以降、急速な近代化を遂げた基礎はここにあったのです。

最強のセイフティーネット

 これらの例が語るところは明らかでしょう。

 グローバリゼーションは21世紀の世界で、もはや避けられるものではありません。問題はそのあり方です。かたくななグローバリズムの否定も、その礼賛もいずれも世界を危うくするものであることに違いありません。否定できないとすると、グローバリゼーションの進む世界の中で、持てる者、持たざる者の差を広げないためにどうするかを考え、実行する必要があります。さまざまな対応があるとは思いますが、その中で、21世紀協会がめざすのは、やはり、教育の普及しかありません。「すべての子どもに教育を」行き渡らせてこそ21世紀の世界への展望が開かれるものと確信して、今はフィリピンの片隅で取り残された少数民族とともに明日の世界を切り開いています。

(川嶌寛之、池田晶子)

《サンサーラ》30号 2003.7.25初掲


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