21CA

インターネット版 《サンサーラ》

SamSara

「物」から「人」へ


これでいいのか、援助
 阪神大震災を経験して、日本でも、ボランティア活動を見直す傾向が出てきたことは喜ばしいことです。この機に、善意の援助ならすべてよしという「援助入門」の時代は終わったように思います。これからは、援助も、いい意味でのプロの時代。善意の押しつけはやめる一方、何でも相手に合わせることからも卒業しなければなりません。

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 今でも多分にその傾向にありますが、「現地の要請」が援助のお題目のように唱えられていた時期がありました。現地に一番必要なものは現地の人々が一番よくわかっているからその声をよく聞け、というものです。これはもちろん、真実には違いありません。しかし、現地に何度も足を運び、実際に現地をこの目で見、また、試行錯誤で援助を行ってわかったのは、これは、真実の一部にすぎないということです。現地の要請は、本当に現地のニーズにあったものであるとは限らない、むしろ、実態に合わないものであることが多く、われわれ外部の人間の方がよくわかることが意外に多いことに気づきます。

雨ざらしのトラクター
 たとえば、現地の農民はみんな、農業指導員までが口をそろえて耕作用にハンドトラクターをほしがります。4年前、ミンドロ島シアポ村で、その要請に対して、わたしは、機械はメンテナンスが大変なこと、機械を動かすためにはガソリンが必要で、それを購入するために、収穫の相当割合が食われる、といって断りました。いわゆる「適正技術」を説いたのですが、現地の人々は不満そうでした。そして、日本がだめなら、というわけで州政府にかけあって、「夢のトラクター」を手に入れました。1年後、わたしがシアポで見たのは、雨ざらしのまま放置されているハンドトラクターでした。理由を聞くと、故障して部品が手に入らなかったということです。わたしの予想したとおりになったのですが、現地の人には、あるいは、必要な経験だったのかもしれません。これでやっとわたしの説く「適正技術」について考えるようになってくれ、いち早くカラバオバンクが実現したのがこの村だからです。

 しかし、もし、機械は適当でないというアドバイスを、現地の人々と一緒に生活し、「苦楽をともにした人」ができたならば、聞いてもらえたのではないでしょうか。このことに思い当たったとき、われわれは、現地指導者を養成することを考えはじめました。

people at siapo 考え直そう
 昔、新聞で、各地のNGOに寄附をしている人の話が出ていました。その人の寄付先の選定基準は、「事務経費の割合の少ない会」でした。つまり、援助そのものにしか寄附したくない、ということです。こういう考え方が大勢を占めているのを承知していたので、われわれは、なるべく事務経費をかけないようにがんばってきました。しかし、もう、「援助入門」の時代は終わりました。

 いくらお金を「モノ」につぎ込んでも、成果がなかなか上がらないといういらだちを抱えながら援助を続けるよりも、考え方を変えて、「つぎ込んだモノ」を最大に活かすことをめざすのです。具体的には、現地の要請をそのまま真に受けてモノを送る前に、調査をする、計画を綿密に練る、モノを送った後のフォローを念入りにする、ということになります。先ほどのハンドトラクターの例でも、機械をメンテナンスすることさえできれば、機械が無駄にならずにすんだのです。新しい洋服を送って、それが汚れたら捨てるという援助はおしまいにしましょう。わたしたちは、洗濯の方法を教えましょう、そして、洋服の作り方を教えましょう。そのために必要なのが人材です。専門知識を有することは当然として、現地に受け入れられ、指導力がある人間こそがいま一番必要なのです。

事務経費の矛盾
 ただし、それには、「事務経費」がかかります。とくに人件費は額が大きいだけに、予算化するのが難しいという実状があります。でも、考えてみてください。一回使って壊れたらおしまいの機械も、人がフォローすれば、何回でも使えるのです。「ヒト」のフォロー次第では、1万円が10万円にも、100万円にもなるのです。しかも、技術という絶対に「壊れてしまわない」ものを人々に残すことができるのです。これこそが、教育をめざした21世紀協会の援助の姿ではないでしょうか。
 「モノ」の援助は確かに、目に見えます、遠い日本からも達成感があります。しかし、21世紀協会は、その「モノ」を作る人間を育てる会です。子供たちの教育がその出発点でした。そして、同じ考えから、われわれは、技術を「伝える」道を選びたいと考えます。目に見える結果も、華やかさもないけれど、21世紀協会が選んだ「援助」の道は、会員のみなさまに支えられて、着実に、芽を出し、花を咲かせ、実を実らせ、種をつくる道なのです。(池田晶子)

《サンサーラ》 14号 1996.2.14初掲



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