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意志の力


道具と意志

 3月に池田理事長が世界銀行とFASIDの主催するセミナーに出席するため、インドネシアのボゴールに飛びました。集まったのは各界で活躍するトッププロばかりです。そして、話し合われたのは「インドネシアにおける地方分権化と自然資源管理及び紛争問題」についてです。その中で、池田は紛争の解決と平和の実現のカギを握るのは「意志」であると強く主張したそうです。それに反して、ほとんどの人は紛争の解決に必要なのは対話の技術や資金であると主張しました。「紛争の解決」というテーマを見つめる次元が違っていたため議論がかみ合わなかったのはいうまでもありません。

ジープからこんにちは

 そもそも、技術や資金といった道具は、目的実現への強い意志を欠いて、何の役に立つのでしょうか。

諦めムード

 当地ミンドロの人々の口からも同じような議論を聞くことがたびたびあります。「フィリピンが貧しいのは知識や技術がないからだ」「学校に行けないのは貧しいからだ」等々。もちろん、人々の暮らしの貧しさ、厳しさは並大抵ではありません。それでも、自分の生活を本当によくしようとする意欲が感じられないことがあまりにも多すぎます。ここでは夢を追いかけようとする前にすでに諦める風潮があります。これは植民地時代から延々と受け継がれてきた病的卑屈さ(とその裏返しのプライド)と、持てる者と持たざる者の厳然たる区別から来るものなのでしょう。金持ちの家に生まれたら一生楽に暮らせ、貧しい家庭に生まれたら食べ物を手当するだけで毎日が過ぎて行くのはたしかです。わたしたちが「一生懸命勉強し、一生懸命がんばればきっとお金もできるしいい生活ができる」と言われてきたことは、ここではただの幻想のようです。しかし、これが嘘なら、いったい人や国が発展するなどと言うことはあり得るのでしょうか。

 今の日本は10年も続く不況から抜け出せずにいますが、戦後の60年代、70年代には、国中にある種の熱気がありました。誰もが働けば働いただけ、勉強すれば勉強しただけ、国をよくすることができると信じ、事実、GDPがどんどん上がり、世界第二の経済大国にまで成長しました。エコノミックアニマルというのはあまり名誉な称号ではありませんが、日本人の働きぶりが奇跡の成長を実現させたことには違いありません。成功に秘訣などというものはありません。強く念じることでのみ夢は実現するのです。子供たちを見ればわかります。子供たちはいつも何かに夢中です。夢中になったら一日中でもギターを弾いていたりバスケットをしたりします。これこそが何かを習得するコツではないでしょうか。科学者でもビジネスマンでも成功を手にした人は皆自分の仕事に夢中に取り組んできた人たちです。

飢餓克服への意志

 ノーベル経済学賞を受賞したアマーティア・センは、自由を拡大し民主主義を機能させることで飢餓を克服し、国を発展させることができると説いています。社会の中で抑圧された人々や夢を実現する意志を失った人々は自由を奪われた人々です。人々に自由を取り戻し、夢を実現する力をつけてこその発展ではないでしょうか。わたしの尊敬するブラジルの作家パウロ・コエーリョも言っています。「何かを手に入れようと強く願ったとき、全宇宙を味方につけることができる」と。

(川嶌寛之)
《サンサーラ》27号 2001.12.10初掲

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