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インターネット版 《サンサーラ》

SamSara

貧困の撲滅と環境の保全


悪循環

パクパク村人と食事

 世銀の主催する貧困の軽減と環境の保全のバランスを取り上げたワークショップに参加するため、バンコクに出かけた。アジア各国の学者、官僚、民間団体を交えてかなり真剣な議論が展開された。われわれNGOはもう長い間このバランスに心を砕いてきたが、この問題が世界的に認識されたことは喜ばしい。

 現在もっとも環境破壊が進んでいるのは途上国である。東京の水はむしろきれいになってきている。汚染に苦しんでいるのはアマゾンの水なのだ。そして、そのアマゾンの森林伐採や自然破壊が、温室効果を促進させ、先進国も巻き込んで地球規模の危機がようやく認識されてきた。

 途上国は貧しい。貧しい人々にとっては、日々の生活の糧を得るのが課題であり、明日、いや、10年先の環境のことなど考えていられない。今日食べるものがなければ明日も10年後もないからだ。そうこうしているうちにますます自然は破壊され、破壊された環境の中で人々の暮らしは一層貧しくなる。そういった悪循環をどこかで断ち切らなければならない。

途上国のジレンマ

 人類はその400万年の歴史の中で、自然を畏れ、自然から多くの恵みを受け、自然と共存してきた。それが農業をはじめてからの2万年の間に急速に自然の搾取が進み、ここ100年の間に人類は自然との共存の形態を完全に捨て去り、自然から取れるだけのものを取る略奪者と化した。もはや自然に対する畏れはなく、科学で身を固めた先進各国は自然から取れるだけのものを強引に奪い取ろうとした。貧しさ故に先進国に資源を提供し続けてきた途上国は自らの不明とはいえ、破壊された自然の中でのたうち回っている。

 そして、遅まきながら10年ほど前から自然を搾取し尽くしたらもはや生きる道はないことに気づき、「自然保護」が叫ばれた。「保護」ではないだろう。われわれこそが自然に守られて生きている。自然に対する畏れはいまだに希薄だ。とはいえ、流れが変わったことに変わりはない。が、ここでも流れから取り残されている人々がいる。先進各国に資源を提供し続けてきた途上国の人々だ。資源を提供し続けた結果、自国の自然は破壊し尽くされ、かつての自然との共存はもはや不可能となっている。かといって科学も技術もはるかに遅れ、国民の間に教育さえ行き渡っていない。貧しさから脱却するため、相変わらず少なくなった資源を売って日々の糧としている。

ここでも教育

 21世紀協会をはじめとするNGOの貧困に対する取り組みは環境を保全し、場合によっては失われた自然を甦らせるというそれだけでも大変な事業といつも隣り合わせだ。環境を損なわず、人々の生活が成り立つようにする、そのぎりぎりのバランスを探ってきた。21世紀協会が提示した答えは総合農業構想。だから、ミンドロは今、自然と人間の共生を探る実験場だ。

 しかし、本当の答えを出すのはマンニャン族を含むミンドロの人々だ。教育を受けた若い人たちが環境や経済などあらゆる要因を考慮して、自分たちの道を選ぶ、それがわたしたちの理想だ。そして、その答えが正しければ、間違いなく、先進国でも同じ答えが出ているだろう。そのときこそ、世界が一つになり、真のグローバリゼーションが達成されるときだ。それにしても、すべての人にあまねく教育が行き渡るのはいつのことだろう。

(池田 晶子)
《サンサーラ》25号 2000.1.1初掲

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