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インターネット版 《サンサーラ》

SamSara

5年間を振り返って


奨学金事業

calamintao school  21世紀協会の設立以来5年間が過ぎました。ゼロからはじめた小さなNGOですが、少しずつ、日本の会員のみなさまからも、フィリピンのみなさまからも、信頼を得て足場を固めて来ました。

 貧しい第三世界の国々がその貧しさゆえにいよいよ貧しくなるその構造を変えるには、費とを育成するしかない。教育によって考える力を養い、第三世界の人々が先進国のエゴにふりまわされることなく、自分の国の方向を自分で決定できるようにしたい、というのがわれわれの理想です。そのための奨学金基金でした。

 ところが、21世紀協会の奨学生として選考した学生は、最貧家庭のこどもたちで、三食をまともにとることさえ困難な状態でした。そいういう中で、十分な教育効果が上がるはずもないため、せめて昼食だけでも補助をできないものかと考えたのが個別給食費、すなわち、奨学生個々の食費補助です。この制度の導入によって、多くの奨学生が安心して勉学に集中できるようになった。実際、成績も上がっていて、健康状態の改善も見られました。

windmill-6  また、ミンドロ島のマンニャン族の村では、せっかく学校がありながら出席率の悪いところが多く見られました。その中で、カラミンタオ村を選び、学校給食、すなわち、昼食を支給したところ、出席率はほぼ100%にまで達し、周辺の集落から学校に通う子供が出て来るほどになりました。はじめのうちは、給食欲しさに学校に来ていたこどもたちにも、徐々に勉学への意欲が出てきて、現在、学校は活発になっています。このカラミンタオ村の成功を受けて、この制度を、シアポ、シプヨ両村に導入することになりました。両村ともカラミンタオ村以上に貧しく、とても学校に行けるような状態ではありません。せめて昼食を供給して、学習の機会を提供すれば、識字率も上がり、次世代へと希望をつなぐことができるようになると期待されます。

 このように、21世紀協会では、教育というものに重きを置いてきた結果、ミンドロ島では、奨学生が増え、諸設備の収容能力を超えてしまいました。そこで、寮の増築、学習スペースの確保のためのオープンハウスの建設、寮母、学習指導員の雇用となりました。これによって、奨学生の学習環境は格段に向上し、公立学校の教育では不十分なところを補える環境が整うことが期待されます。一方では、奨学生の通う公立学校にも机、椅子の提供ということで、支援を行ない、地域全体の教育環境の向上を目指します。

稲の実り具合をチェック

少数民族支援事業

 ところで、奨学生の住む寮や、奨学生の通う学校は、雨期には川の氾濫のため、水浸しになります。これは、まわりの山の木の伐採による森林の破壊の帰結です。山は保水力をなくしたため、熱帯特有のスコールが、山から強流となって流れ落ち、川を氾濫させ、田畑の土壌を浸食し、平地の植物を流してしまいます。熱帯に降るスコールは、豊かな熱帯雨林があってはじめてそれを受けとめられたのです。その森を失った熱帯の島では、飢餓に瀕する人々が出てきました。それが、奨学生の親たちの事情です。われわれは、奨学金プロジェクトにより次世代の担い手を育てると同時に、ホリスティックファーミング構想を実行することで次世代に今よりもいい環境を残したいと考えました。

 ホリスティックファーミング構想を展開する場として、シプヨ村という遠隔地のため外界からの干渉の比較的少ない地を選び、94年度にこのプロジェクトを開始しました。カラバオバンクの開設、農機具の購入、種子、苗の購入、風車の設置等、主要な資本の投下はすでに94年度に完了し、95年度からは、計画の修正、追加をしつつ、フォローアップを丁寧に行いたいと考えます。プロジェクトが軌道に乗り、一度は破壊された環境が回復するにつれ、山は再び木で覆われ、激しい雨を受けとめることができるようになり、平野部には作物が実り、川の流れは穏やかになることが期待されます。自然がバランスを取り戻すと、人間は自然の脅威にさらされている今の状態から、自然に護られ、育てられる本来の姿にもどるでしょう。

これからの5年間

 このように、各事業は、数年かけて主要な資本投下を完了し、今年度からは、フォローアップが最重要課題となりました。ここ数年行なってきたような、「もの」を提供することが中心の援助は、少し休んで、リエゾンオフィス開設によって「ひと」を提供して、現地の人々との交流をはかるとともに、提供した「もの」を最大限に活かすためのソフト面でのフォローアップを中心に展開したいと考えます。これによって、過去に資金を投下したプロジェクトが成長し、独自に新たな展開が可能となることが期待されます。 一気に階段を駆け上がってきたこの5年間を振り返り、これからの5年間は、息の長い、現地に根ざした協力を目指したいと考えます。

(池田晶子)

《サンサーラ》 12号 1995.6.20初掲



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