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グローバリゼーションの落とし穴




リバゴン村を訪問するスタッフ。。熱帯のジャングルを抜ける

日本の地位の低下?

 アメリカのCIAのレポートが出た。曰く、2015年には日本の経済的地位は低下し、中国インドが台頭する、と。日本の経済的地位の低下はそうかもしれない。しかし、中国インドの台頭には疑問だ。たしかに、中国、インド、韓国、さらに、われわれのフィリピンのIT分野での台頭は著しい。韓国に至ってはアメリカに次ぐインターネット接続率を誇り、規制でがんじがらめの日本ははるかに後れをとっている。インド、中国はそもそもポテンシャルの高い国だ。

 しかし、5000万人にも満たない人口の韓国はともかくとして、中国11億6千万、インド8億5千万の巨大人口を擁する二国が本当の意味でのグローバリゼーションの中で世界のリーダとなりうるのかというと、答えは「否」だ。理由は二つ。民主主義が未熟なことと識字率の低いことである。インドの政治は一部の特権階級に独占され、中国に至っては未だに一党独裁政治だ。民主主義の機能しない国ではグローバリゼーションはありえない。なぜなら、グローバリゼーションとは、情報の共有に他ならず、情報の公開を行おうとしない国には民主主義もグローバリゼーションもあり得ないからだ。

情報の公開

 ITはその名の通り、情報に関する技術である。発信するべき情報がなければ技術など何の役にも立たない。ITが約束するバラ色の未来には情報の共有によるすべての人間の平等がある。真の民主主義を世界にあまねく広める道具として価値は極めて高い。

 そこで次の教育問題が出てくる。国民の多くがいまだに読み書きができない国にとってグローバリゼーションやITにどれほどの意味があるだろうか。

 中国教育には熱心だが、依然取りこぼしが多すぎる、社会不正義によって虐げられた人々が教育を受ける機会もなく、社会の底辺でうごめいている。インドは教育に熱心ではない。さすがに非識字率は減少したとはいえ、'95年現在の識字率は52%、非識字人口は3億人に上る(ユネスコ統計)。中国とて識字率はいまだに81.5%、なおも非識字人口を1.5億人以上(同)かかえる。しかも、20代後半という次世代を担う若者に非識字者が多いという厳しい現実がある。

カギは教育の普及

 いずれの場合も、社会の上澄みのほんの一部の人がどれほど先進国に追いつき追い越したところで、多くの「扶養家族」をかかえる結果となる。社会の底辺で読み書きもできない人々を多く残したまま、上辺で産業を活性化させ、世界レベルに引き上げたとしても、それはまやかしの発展でしかない。現在の問題を先送りしているだけではすまされない。送った先では問題が拡大していることになる。

 教訓は一つ。これからグローバリゼーションによってどんどん狭くなっていく地球で、たとえ一握りといえども、グローバリゼーションの恩恵にあずかることのできない人間、「取りこぼし」があってはいけない。その「取りこぼし」がかならずや国全体の発展の障碍となり、国にとって、果ては世界にとって大きな負担となるだろう。そのときになって、もっと教育を隅々まで普及させていればよかったと言ってももう遅い。

 環境破壊、人口爆発、女性問題、内戦など、世界の多くの問題はすべての人が教育を受けられるようになったらずいぶんと解決しはしないだろうか。

(池田 晶子)
《サンサーラ》26号 2001.6.30初掲

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