インターネット版 《サンサーラ》

SamSara

マンニャン族文化考


タガログ人は怖い!

 97年1月のことだ。総合農業を進めるシプヨ村で長老格マルシアルの妻が長く続く咳に悩んでいた。微熱が続き、咳に血が混じっているため結核の恐れもある。一刻も早く病院での診察、検査が必要である。しかし何としても村を離れようとしない。50歳ほどと思われる彼女は、生まれてこのかたマンニャンの集落を離れたことがなく、町へ行くなど自殺に等しいとさえ思っていた。山に住む多くのマンニャンにとって、一般フィリピン人や外国人は「鬼」か「蛇」ほど恐ろしい。一般フィリピン人がマンニャン集落を訪れることもある。そんな時、大人は子供を家の中に隠してしまう。そして、「絶対、彼らに近づくな」、と注意する。

 懸命の説得が功を奏し、21世紀協会のスタッフが町まで同行することでやっと承諾した。もちろん、 夫のマルシアルと2人の息子が同伴だ。ところが、やっと、出発という時、今度は「町に知り合いがいるだろうか?いないなら行かない!」と言い出した。思案の末、マンニャン奨学生の面倒を見ているスタッフのイナン(タガログ人)が面識のあることを思い出し、ようやく納得して、出発となった。結局、彼女は気管支炎ということで大事にいたらなかったが、マンニャン族への医療援助の難しさを知る一場面であった。

占い用豚

 97年、9月雨期も終わりに近づいたころ、シプヨ村の長であるマクシーノが町の事務所を訪ねてきた。用件を聞くと、豚が必要なのだが買う金がない。お金を貸してほしい、と言う。理由を聞くと、最近村で病気が絶えないので豚を殺して吉凶を占うということであった。マンニャン族は経済的余裕があると豚を飼う。以前は食べるためとばかり考えていたがそればかりではない。豚は吉凶を占うための生活必需品なのである。不幸や災いの起こる度に豚が殺される。我々には理解できないがその時の血の流れ方や、横隔膜のすじの形で未来を占うのである。不幸が続いた時など、必然的に連日この儀式が行われることがある。村に駐在する協会スタッフは「毎日肉が食べられる」、と喜んでいたが、彼らにとっては真剣そのものである。

疑心暗鬼

 マンニャン族は彼ら独特の方法で自然界にあるサインを読みとる。山や他の集落にでかける時、同伴者がくしゃみをすれば途端に中止である。悪い徴だという。村の誰かが人に勧められて新種の野菜を植えた。順調に成長していたが、子供が病気になった。彼は青々とした野菜を根っこから全て引き抜いてしまった。見たことのないもの、想像を絶するものは全て「悪い」ものなのである。

 95年、シプヨ村に安全な生活用水確保のために風車を建設した時のことだ。今では村の必需品になっている風車も、導入に当たっては侃々諤々だった。稲作もはじめは疑心暗鬼で、一年目は農業指導員がほとんど全てを行わなければならなかった。目の前で具体的に示し、結果を見せ(たくさんの米)、結果を味わってはじめて、本当に納得し、彼らも腰をあげる。

カラバオ

悪のしるし、カラバオ

 マンニャンに耕作用のカラバオを与えるとしばしば事故が起こる。雄同士がなわばり争いをしたりして、怪我をし、時に死亡することもある。はじめは家畜の飼育に慣れないからだと考えていた。しかし、彼らの文化を知るにつれ、別の問題が浮かび上がってきた。そもそも彼らにとってカラバオや鹿など、大型動物は全て恐ろしいものとして御法度だったのだ。山でこれら大型動物に遭遇することは悪い徴である。最近は指導の充実とともにこうした問題は少なくなっているが、文化の違いはまだまだ大きい。

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