インターネット版 《サンサーラ》

SamSara

嵐を呼ぶ女!?


21世紀協会理事長
池田晶子

堕天使

計算コンクールの「理事長杯」授賞式

 わたしは年に2回ほど現地のミンドロを訪問する。もちろん、現地と日本とのつなぎ役をするためだ。2週間足らずの期間で、各村を訪問し、長老と話し合いを持ち、村人と食事をともにしたりして交流する。スタッフや奨学生に説教をしなければならないこともある。悪役を務めるのも理事長の仕事だからやむを得ない。ノーと言えない現場のスタッフの代わりにノーを言うのも仕事だ。本当はやってあげたいのだけど、日本のうるさ方が却下してしまったと現場スタッフは困った顔をする。こんなことを繰り返しているうちに、はじめのうちはお金を運んでくれる天使だったわたしは、今や見事に堕天使と相成り、訪問のたびに人々が理事長に群がることもよほど少なくなった。

ねずみの出産!!

  ところで、海辺にあるミンドロ事務所と隣接する学生寮には学生とスタッフのほかにさまざまな住人がいる。トイレに居着いたさそり、屋根を這うやもり、夜中にばたばたと闖入してくるこうもり、かまれると痛いことこの上ないごきぶり、うっかり甘いもの置きっ放しにしたらたちまちたかる蟻、いやはや大変なところではある。中でもねずみにはいつも悩まされる。寝ていると大きなねずみがおそってきたりすることもあるが、たいていは手のひらに乗るほどの小さな家ねずみだ。

 ある時、ねずみ退治令が川嶌氏より出された。段ボール片にねとねとしたねずみとり用のノリのようなものを塗り、事務所のあちこちに配置する。さしずめお手製のねずみホイホイといったところだろうか。ただ、覆いがないので、わたしもときどき引っかかってしまうのが難点だ。わたしも引っかかったが、もちろん、ねずみも引っかかった。川嶌氏は朝、昼、晩と熱心にねずみの引っかかり具合を点検する。よほどねずみには腹を据えかねているのだろう。一匹、二匹とねずみがかかるたびに満足げな笑みを浮かべる川嶌氏をわたしはいささかたじろぎ気味に見ている。と、そのとき、声が上がった。

 「ぎゃぉ〜〜」

 伸也君だ。何だろう、と全員が声のするところに走った。伸也君が床に仕掛けたねずみホイホイを見つめている。なんと、捕まってじたばたしているねずみの横に数匹のねずみの嬰児がいるではないか。毒を仕掛けたわけではないから、捕まったねずみはしばらく生きている。妊娠しているねずみが捕まって、捕まったまま出産したらしいのだ。この世にも奇妙な光景に皆の目が釘付けとなったのは言うまでもない。さすがにミンドロでもそうそうない事件だ。

いちゃもんがいっぱい

 こんな風にわたしの現地訪問はさまざまな事件で彩られる。何度訪れても必ず事件は起きる。川嶌氏によるとわたしが来る時をねらって事件が起きるらしい。事件といっても刃傷沙汰のような深刻なものから大型台風やねずみの出産までさまざまだが、かくしてわたしは「嵐を呼ぶ女」という称号を得たのだった。

《サンサーラ》27号 2001.12.10掲載


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